ご予約・お問合せ

お口の中だけではない、全身の健康にも関わる歯周病は早期発見がカギ

公開日:2018.06.07
更新日:2022.01.08

今や生活習慣病のひとつとして位置付けられている歯周病は、お口の中だけでなく全身の健康にも深く関わります。
そこで歯周病と全身疾患の関連性および歯周病を防ぐためにすべきことについてお話しします。

歯周病の症状とは

歯周病は、歯周病菌が原因で歯ぐきなどの歯周組織に炎症が起こる感染症です。

歯周病の症状は歯ぐきの腫れや出血から始まり、さらに進行すると歯を支える歯槽骨が吸収されて歯が揺れ動き、最後には抜け落ちてしまいます。
歯周病は、歯ぐきの腫れや出血といった歯肉炎の症状が始まりです。

やがて歯肉炎が悪化し、歯周ポケットが深くなるなど不可逆的な歯周病へと進行していきます。

歯周病が進行すると歯ぐきの腫れや出血に加え歯を支えている骨が溶け始め、口臭がきつくなる、歯ぐきが下がる、痛みで食べ物が噛み辛くなるといった症状が出てきます。
歯周ポケットの数値も悪化し、少しずつ歯が揺れ動く「動揺」の症状も出始めます。

さらに歯周病菌が歯槽骨まで侵入すると骨が吸収され始め、歯を支えることができなくなり、自然に抜け落ちてしまう、あるいは抜歯が必要になるなど、最終的に歯を失ってしまいます。

歯周病の原因

歯周病の原因はプラークです。
お口の中にはたくさんの細菌が潜んでいますが、プラークは食事に含まれるショ糖を栄養源としてミュータンス菌が歯の表面にねばねばを作り出します。
そこに、それ以外のお口の中の細菌も繁殖を行うことにより形成される物質で、虫歯も歯周病もこのプラークが直接的な原因です。

歯周病は歯に付着したプラークに歯周病菌が棲みついて毒素を出し、歯ぐきに炎症が起きます。
歯の表面についたばかりのプラークは柔らかく、適切なブラッシングやフロッシングで落とすことは可能です。

しかし落としきれずに残ったプラークは唾液に含まれるカルシウムやリン酸と結合して48時間ほどで石灰化が始まり、固い歯石となって歯に付着します。

この歯石の表面はざらざらしているため新たなプラークが付きやすく、歯周病を悪化させる原因となります。

特に歯ぐきの下(歯肉縁下)に付着した歯石は歯周病が進行していることを表しているため、
そのままにしておくと歯槽骨が吸収され、歯が動き始めるのも時間の問題です。

歯周病が与える全身への影響について

歯周病は全身疾患に大きく関係していることが、最近の研究で報告されています。
歯周病とその原因となる歯周病の病原菌が体内へ入り込み、さまざまな全身疾患を引き起こします。

糖尿病

歯周病ともっとも関係が深いと言われているのが糖尿病です。
糖尿病は、血糖値をコントロールするインシュリンの作用が十分でないため、血糖値が高くなる病気です。

歯周病になると、歯周病原菌が出す独資が歯ぐきの毛細血管から入り込み、全身に回ります。
私たちの体は毒素に対抗する「サイトカイン」という物質を出しますが、サイトカインはインシュリンを作りにくくしてしまうために血糖値を下げにくくします。この結果高血糖が続き、さまざまな合併症を引き起こしてしまうのです。

また糖尿病が歯周病を悪化させることもあります。

糖尿病になると免疫力が落ちるため、細菌の活動を抑制する作用が低下します。
歯周病は細菌による感染症のため、糖尿病になると歯周病も悪化する傾向にあります。

このように、歯周病と糖尿病は非常に深く関わっていることがわかっています。

感染性心内膜炎

感染性心内膜炎とは、最近が心臓の弁やその付近に付着して感染症を引き起こします。

歯周組織から侵入した歯周病原菌が血管の中に入り込み、心臓付近に到達して心内膜に感染することで症状が起こります。
心臓の弁に異常がある場合や損傷している場合、または人工弁が入っている場合は、正常な場合よりも細菌性心内膜炎のリスクが高くなります。

動脈硬化および脳梗塞

歯周病菌は血管内部に付着して血栓の原因となることで、血管を狭くしてしまいます。
心臓付近なら動脈硬化、脳の血管の場合は脳梗塞を引き起こす原因になります。

誤嚥性肺炎

高齢者や寝たきりの人に見られる誤嚥性肺炎は、嚥下反射が低下していることにより歯周病菌が気管支や肺に到達することで起こります。
高齢者や寝たきりの人は抵抗力が落ちていることが多いため、誤嚥により歯周病菌が肺などで増殖すると肺炎を起こしてしまいます。

早産および低体重児出産

妊娠中の女性が歯周病に感染してしまうと、血管の中に歯周病原菌が入り込み、子宮の筋肉を収縮させる物質を作り出してしまうことがあります。
子宮が収縮すると出産につながるため、まだ正期産に達していない妊婦さんは早産になり、早産で生まれた赤ちゃんは必然的に低体重で生まれる確率が非常に高くなります。

このため妊娠中の女性の歯周病は、早産や低体重児出産の原因となります。

歯周病の進行を防ぐためには早期発見、早期治療

お伝えしたように、歯周病はお口の中だけでなく全身疾患に関わっています。
歯周病は歯を失うだけでなく、体の健康にも影響を与えてしまう怖い病気と言えるでしょう。

体の健康は、まずお口の健康から始まります。
歯周病を防ぐためには、何よりもまず早期発見です。
歯周病は歯肉炎が悪化することで進行するため、歯肉炎の段階で適切な処置を受けることが望ましいと言えます。

家庭での正しいブラッシングとフロッシングが歯周病予防の基本ですが、日ごろの口腔ケアではセルフケアが難しい部分のプラークが歯石となります。
この状態を放置すると、歯肉炎がやがて歯周病へと進行し、改善が難しくなってしまいます。

歯周病を早期発見するためには、歯科医院での定期健診が非常に重要です。

ご自身ではきれいに磨けていると思っていても、見にくい部分や磨きにくい部分にはプラークや歯石が溜まりがちです。
歯石除去やクリーニングなど、歯科医院で専門家の処置を受けることは、歯周病の予防や早期発見、早期治療へとつながるのです。

また、歯科検診や専門家による口腔ケアの頻度が高いほうが、歯の寿命が長くなることでも知られています。

定期健診、歯周病ドックこそが、お口と体の健康への第一歩です

歯科医院での定期健診は、ただ単に歯の汚れや歯石を落とすことが目的ではありません。

虫歯や歯周病の兆候はないかなど、お口の中全体に問題はないかどうかを確認するためであり、もし異常が発見された場合でも、早期に治療を受けることで悪化を防ぐことができます。
とくに歯周病は歯を支えている骨を失った場合、新しく骨を作ることは非常に難しいです。

健康な毎日を過ごすためにも、歯科医院での定期健診はぜひ受けるようにしてください。

この記事をシェアする