タバコと歯周病。喫煙習慣が歯周病を悪化させる理由とは?
公開日:2018.06.25
更新日:2022.01.08
喫煙習慣が歯周病を悪化させる理由とは
歯を失う二大原因のひとつである歯周病は、喫煙習慣がある人はさらにリスクが上昇します。
体の健康への害だけでなく、お口の中にも深刻な影響を与える喫煙習慣ですが、なぜ歯周病を悪化させるのか、その理由を説明します。
喫煙習慣が与える歯周病との関連性とは
タバコは百害あって一利なし、とよく言われます。
タバコの煙には非常に多くの有害物質が含まれており、肺ガンなど呼吸器官に健康へ悪影響を与えることはよく知られていますが、真っ先に煙を体の中へ取り込むのは、口の中なのです。そのためお口の中は、タバコの影響を真っ先に受けやすい器官なのです。
その中でも歯周病との関連が非常に深いと言われていますが、タバコと歯周病には次のような関連性があると言われています。
・歯周組織に必要な酸素や栄養を供給するための血管が、タバコの煙に含まれるニコチンにより収縮してしまう
・歯周病気をはじめとする細菌に抵抗するための白血球の機能が低下する
・歯肉を修復するための細胞の働きが低下する
・ヘモグロビンと比べて200倍酸素と結合する力が強い一酸化炭素を吸い込むことにより、歯周ポケット内の酸素が不足するため、歯周病菌が活動しやすい環境を作ってしまう
ニコチンは、血管収縮を引き起こします。そのため喫煙後の口腔内は歯肉への血流量が少なくなっており、ヘモグロビン量と酸素飽和度を低下させます。
通常、歯周病と気付くのは歯肉の腫れと出血です。しかし長時間の喫煙は歯周病によって炎症を起こしている歯肉の出血量が少なくなるため、逆に歯周病と気付きにくくなっています。
ここが喫煙の大きなデメリットで、進行した歯周病であっても、歯肉の出血が少ないため歯周を見過ごしてしまいがちなのです。
非喫煙で歯周病になっている人は、歯周ポケット検査の際に器具を歯周ポケットに入れたときに出血が見られます。ところが喫煙者の場合、歯周ポケット検査の際の出血が少なく、歯肉の炎症の状態が分かりにくくなっています。そのため喫煙者は歯周病になっていることに気づきにくく、気が付けば歯周病がかなり進行していることもしばしば見受けられます。
また喫煙者の歯肉は特有の赤黒い色になっており、歯肉が炎症を起こしているかどうか、視覚的にわかりづらいことも歯周病の悪化を招く原因です。
また歯周病菌は酸素を嫌います。健康な歯肉は血管を通じてたっぷりの酸素と栄養分を送り届けます。ところがタバコを吸うと酸素の供給量が減少してしまいます。これは酸素を嫌う歯周病菌にとって大変好都合で、歯周病菌が活動しやすい環境なのです。
そしてニコチンは、体の免疫機能を守る白血球の働きを抑制します。
歯周病の治療を行っても歯肉の改善が悪く、治療の効果が低下してしまいます。
このように、歯周病は歯を失う原因のひとつですが、喫煙することでさらにリスクが上昇してしまいます。歯周病は全身疾患にも関わり、糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞、誤嚥性肺炎、妊婦の早産および低体重児出産リスクなど様々な悪影響があると言われています。
喫煙することで、お口の中だけでなく健康にも影響する歯周病をさらに助長してしまうことがおわかりいただけるのではないでしょうか。
歯周病以外の口腔内への影響
歯周病以外にも、喫煙はお口の中へ悪影響を与えます。特に口腔ガンを引き起こす危険性は非喫煙者と比べて5倍高くなると言われています。またニコチンは歯肉の修復を遅れさせてしまうため、抜歯後の傷の治癒が非喫煙者と比べると、時間がかかる傾向があります。
またヤニが付着することで審美性が損なわれ、見た目にも清潔感が損なわれます。
また口臭の原因にもなるなど、喫煙習慣は歯周病以外にも様々な影響を与えるのです。
禁煙の歯周病への効果
愛煙家にとって禁煙はとても辛く、よほど意思が強くない限り、すっぱりと禁煙することはなかなか難しいことでしょう。
しかし、喫煙が与える歯周病への高リスクを考えると、禁煙が最も歯周病治療に必要でしょう。
つまり禁煙は歯周病改善へのスタートです。まだ歯周病に罹患していない人では、歯周病にかかる割合は4割減少します。
そして既に歯周病になっている人でも、禁煙をすることで歯周病による歯の喪失リスクは低減すると報告されています。
また禁煙することで、口腔ガンなど歯周病以外の口腔内の疾患リスクも低減します。
タバコから大切な歯と健康を守るためにはまず禁煙から始めるべきでしょう。